人間を宿り主にする寄生虫の場合、少しくらいならおなかに寄生されても、基本的には自覚症状は生じません。
私もかつて、一五年ほどおなかにサナダムシを飼っていましたが、存在を感じたことはただの一度もありませんでした。
やはりサナダムシの宿り主になってもらった私の奥さんのほうは、「あっ、ここにいる気がする!」などとおなかを指さすときもありましたが、これが本当だったかどうかは、ちょっとわかりません。もちろん、寄生虫の数が多すぎれば、物理的な問題で痛みが出たでしょうが、寄生されていたすべての人が、みんなおなかが痛かったわけではないはずです。
ただし、怖い寄生虫もいます。人間以外の動物に寄生するものです。北海道では、「エキノコックス」という怖い寄生虫が流行していますが、
これはキタキツネに寄生するサナダムシのことです。寄生されているキタキツネのほうはなんともないのですが、人に寄生すると重篤な問題を引き起こします。
エキノコックスは経口感染です。エキノコックスに寄生されたキタキツネの糞便には、エキノコックスの卵が含まれています。これが水や食べものなどを通して、人間の体内に入ります。
その後、卵は体内で幼虫になり、主に人間の肝臓へ寄生します。ほかにも、肺や脳、心臓などに寄生されることもあります。知らずに長期間放置すると、死に至ることもあるのです。
ですから、エキノコックスの感染が確認されている土地では、キタキツネの生息地にはあまり近寄らない、その地域の犬を触ったら必ず手を洗う(犬も感染する)、生水を飲まない、山菜などは加熱調理する、といった点に注意し、身を守ることです。
宿り主に優しいのは寄生虫もウイルスも同じで、一人では生きられないからこそ、宿り主の体を借りて子どもを育てているのです。
中国発祥のSARSウイルスは、人間に感染するとえらいことになりますが、もともとの宿り主であるハクビシンには、とくに問題を起こしません。ニワトリが感染すると大量死を引き起こす鳥インフルエンザウイルスも、カモの体のなかでずっと生きていました。
人間の寄生虫もそうですが、SARSウイルス、鳥インフルエンザウイルスも、宿り主の免疫バランスを保つなど、なにかしらの役割を担ってきたのです。寄生されて何事も起こらないのは、大昔から宿り主としてつき合いのある寄生虫、ウイルスに限った話です。滅多に起こらないことですが、寄生されたことが自覚できるようなケースは、非常に危険だということです。